つかさスタッフのブログ

遺言執行者とは? 

こんにちは スタッフの仲田です。

遺言書作成のご相談の際に、「遺言執行者は選任したほうがいいですか?」と質問をいただくことがあります。

遺言執行者とは、遺言者が亡くなった後、遺言の内容を実現するための手続きをする人のことをいいます。
遺言執行者を選任しておかなければ遺言の内容が実現できないわけではなく、遺言執行者が選任されていなくても、相続人全員が協力して遺言の執行を行うことができれば遺言の内容は実現可能です。

しかし、遺言執行者を選任しておけば、遺言執行者が単独で手続きを進めることができるため、相続人の人数が多い場合や相続人の間でトラブルとなりそうな場合などは、遺言執行者を選任するケースも多いです。

今回は、遺言執行者を選任するにあたって質問をいただくことが多い
「遺言執行者となることができる人はどんな人なのか」
「遺言執行者を選任をするためにはどんな方法があるのか」
「遺言執行者ができる具体的な手続きとは何か」
についてご紹介します。

1.遺言執行者となることができる人はどんな人?

遺言執行者は、未成年者・破産者以外は誰でもなることができます。

相続人や受遺者も遺言執行者になることはできますが、他の相続人との間でトラブルとなる可能性も高くなりますので、トラブルが予想される場合は専門家に遺言執行者への就任をお願いするほうが良い場合もあります。
また、法人が遺言執行者になることも可能です。


2.遺言執行者を選任をするためにはどんな方法がある?

「遺言執行者」選任の方法は3つあります。

遺言者本人が遺言書で選任する
遺言者が遺言書に、遺言執行者になってもらいたい人の住所、氏名を書いて、「遺言執行者として選任する」と指定する方法です。

②遺言者が亡くなった後に相続人が家庭裁判所に申し立てて選任してもらう
遺言者が遺言書で遺言執行者を選任しなかった場合には、遺言者が亡くなった後に、相続人が家庭裁判所に申立てをして、遺言執行者を選任してもらう方法です。
申立てができるのは「相続人、受贈者、債権者などの利害関係人」です。

③遺言書の中で第三者に決めてもらう
遺言者が遺言書に、「遺言執行者の選任を〇〇に依頼する」旨を記載しておく方法です。

なお、遺言執行者の人数に決まりはなく、複数選任することも可能です。
また、遺言執行者が先に選任されている場合でも、理由があれば追加選任することもできます。
ただし、複数選任されている場合には、遺言執行は過半数で決めることになりますので注意が必要です。

(注意点)
・遺言執行者が偶数人で過半数にならない場合
たとえば、遺言執行者が3人ならば遺言執行をするには2人以上の賛成が必要です。
しかし、遺言執行者が偶数人だと可否が同じ数になって、遺言執行が進まなくなる可能性があります。 

・遺言執行者を定めていない部分がある場合
遺言執行者Aは不動産についてのみ、遺言執行者Bは預貯金についてのみ権限を有するという内容だったとします。
財産が不動産と預貯金だけであれば問題ないのですが、そのほかの財産については遺言執行者がいないことになってしまい、相続人全員の協力が必要となったり、その財産についての遺言執行者を新たに選任してもらったりしなければならなくなります。


3.「遺言執行者」ができる具体的な手続きとは?

遺言執行者は以下の手続きを行います。

・預貯金払い戻し
・株式の名義変更
・不動産の名義変更
・寄付
・保険金の受取人変更
・子どもの認知
・相続人の排除や取り消し  など

ただし、子どもを認知する場合(婚姻関係のない人との間に生まれた子どもを自分の子どもとして届け出ること)、相続人の排除や取り消しをしたい場合(遺言者に暴力を振るったり、多額の財産も持ち逃げしたりした相続人を相続人にさせないために裁判をおこすこと)は遺言執行者だけに手続きをする権限があるため、遺言執行者の選任は不可欠です。

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せっかく遺言書を作成したのに、遺言執行者を選任しなかったために、遺言の内容が実現されなかったというような残念な結果とならないためにも、専門家と相談し、適切なアドバイスを受けながら、遺言書を作成することをおすすめします。

相続に関する手続きには、書類の作成や署名押印手続きなど手間がかかる作業が多いです。加えて、相続人が複数であったり遠方に住んでいる場合には、書類を揃えるだけでも時間がかかってしまいます。
ですので、遺言執行者を選任することによって、遺言執行者となってくれる人に大きな負担になってしまうのではないか、と不安に感じる方もいらっしゃるかもしれません。
そんな方は、ぜひ私どもにご相談ください。
司法書士法人つかさが遺言執行者となり、遺言の内容を実現するための手続きをいたします。

お気軽にご相談ください。

外国人の遺言作成

2021年8月4日に総務省が発表した「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」によると、2021年1月1日時点での日本の外国人人口は281万人だそうです。
昨年は新型コロナウイルスの影響もあってか外国人住民の人口が減少に転じたそうですが、日常生活の中で外国人の方を見かける頻度は年々増えている実感があります。
店員さんが外国人の方ばかりのコンビニや飲食店も非常に多いですよね。
私が学生の頃のアルバイト先にも外国人の方が何人もいました。
話を聞いてみると、それぞれ日本に来た理由は違いましたが、皆が共通して日本での生活が好きだと笑顔で話してくれたのをよく覚えています。

そのように日本のことを気に入って暮らしている外国人の方々の中には、遺言を作りたいと思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
実際、外国人の方が遺言を作成せずに相続が発生すると、日本人の相続と比べて手続きにかなりの労力を要する可能性が非常に高いです。

今回は、日本で暮らす外国人の方が日本で遺言を作成する場合の注意点とメリットについてお話をしていきたいと思います。

1.外国人による遺言作成の注意点
外国人の方も日本で遺言を作成することは可能ですが、注意点として
①「どの国の法律に従った方式で作成をするか」
②「遺言の成立・効力についてはどの国の法律で判断されるか」
の2つがあります。

①については、自分が国籍を有する国の方式や日本の方式で遺言を作成することが可能とされています。
日本に所有している財産の相続については、日本の方式で作成をしたほうが手続きがスムーズなため、日本の方式での作成がおすすめです。
自筆で作成することももちろん可能ですが、検認の手続きの際に法定相続人へ通知を行う都合上、相続人の確定作業が発生してしまいます。
外国人の方の場合、この相続人の確定作業に非常に手間がかかる場合が多いので、検認が不要かつ内容の不備による無効の可能性の低い公正証書遺言で作成することをおすすめします。

②については、遺言を作成した人の本国法(国籍を有する国の法律)に従うものとされています。
せっかく作成した遺言が無効とされないように、作成する前にしっかりとご自身の本国法の規定を調べることが必要になります。

2.外国人が遺言を作成するメリット
次に外国人の方が遺言を作成するメリットについては、次の3つがあります。

メリット①「法定相続人全員の証明を省略できる。」
注意点①でも触れましたが、法定相続人の確定作業は戸籍のある日本でも手間がかかりますので、戸籍制度のない国の方の相続となるとなおさらです。様々な証明書類を取得することになり、相当な時間と手間を要します。
しかし、遺言(公正証書遺言)があれば、遺言内で指定された人たちの証明書類だけで手続きを進めることが可能になりますので、書類取得の手間をかなり軽減することができるでしょう。

メリット②「遺産分割が不要(相続の準拠法が日本法の場合)」
相続人が海外に住んでいて、遺産分割協議がなかなか進まず、相続手続きが長期間停滞するケースは非常に多く見かけます。
しかし、遺言があれば遺産分割協議を行わなくても済むので、手続きがスムーズに行えます。

メリット③「公的機関、金融機関の理解不足による余計な手間が軽減される。」
遺言がない場合、公的機関、金融機関で手続きを行う際、担当者の国際相続についての知識や経験が足りず、手続きに余計な手間や時間がかかる可能性が非常に高いです。
しかし、遺言があれば、遺言の内容に従えばよいので、担当者が迷う余地を減らすことができます。

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このように、外国人の方が遺言を作成するには注意が必要な点こそありますが、作成するメリットは非常に大きいです。

日本で暮らして築いた大切な財産。
遺された人が手続きに困らずに受け取れるように、遺言を作成しておくことを強くおすすめします。

当事務所の専門家たちも全力でサポートをいたしますので、少しでも興味がありましたらお気軽にご相談ください。

 

あなたの想いが伝わる 遺言書の付言事項とは

こんにちは。スタッフの仲田です。

遺言書は、相続のトラブルを防止するためには有効な手段のひとつです。
しかし、相続人の1人に多くの財産を渡すというような内容の遺言書では、かえってその遺言書がもとで家族が揉めてしまい、関係が悪化してしまうようなケースもたくさんあります。

遺言書は「家族に宛てた最後の手紙」といわれますが、実際は、財産の分配方法だけが書かれた遺言書も多く、家族は「手紙を受け取った」と感じることは少ないかもしれません。

先日、相続登記をするためにお預かりした遺言書の最後に、“みんなのおかげで幸せな人生を送ることができました。本当にありがとう という言葉が最後に添えられていました。
私もこんな素敵な言葉が添えられた遺言書を見たのは初めてで、心がじんわりしました。

この方の遺言書のように、家族への感謝の言葉や、遺言書を書いた理由などを添えることによって “あなたの想い” が伝わる、遺言書の「付言事項」についてご紹介します。

【遺言書に記載する事項】

遺言書には、記載することで法的効力が認められる「法定遺言事項」と、記載しても法的効力が認めらない「付言事項」があります。

「法定遺言事項」は、相続分の指定、遺産分割方法の指定など財産の処分・分配に関する事項、子の認知、相続人の廃除など相続人の身分に関する事項で、その書き方は民法によって定められています。

一方、「付言事項」は書き方は自由で、なんでも書くことができます。

しかし、受け取った家族の気持ちを考えずに書いてしまうと、家族の関係を悪化させてしまうこともありますので注意が必要です。

【付言事項として加えることをおすすめする内容】

・家族への感謝の気持ち
・なぜ遺言を作成しようと思ったのかという理由
・どうしてこの配分にしたのかという意図や理由
・葬儀の方法  など

【付言事項の注意点】
・否定的な言葉はあまり書かないようにしましょう。
・あまり多くのことを書くことは避けましょう。
もし、たくさん書きたい場合には手紙を添えたり、別途エンディングノートを利用したりしましょう。
・葬儀の方法などは、葬儀後に遺言書を開くこととなる場合もあります。あらかじめ希望する葬儀の方法については家族に伝えておきましょう。

では、次に具体的な事例を紹介します。

【付言事項の具体例】

1 事業の後継者として長男に財産を多く相続させる場合

長男の太郎は大学卒業後、私とともに家業に従事し、その発展に大きく貢献してくれました。そのおかげで、私も安心して老後を暮らすことができました。そこで、私は太郎に他の兄弟よりも多い遺産を渡すことにしました。
他の兄弟も、太郎が家業に貢献してくれていることは知っていると思いますので、このような遺言を残すことを理解してくれるとうれしいです。私亡き後も家族みんなが仲良く暮らしていくことを心から願っています。

2 遺留分を請求しないでほしい場合

私が亡くなった後も妻には安心して暮らしていってほしいので、妻に自宅不動産と預金の半分を相続してもらうこととしました。
どうか子どもたちは遺留分は請求しないでください。私亡き後もお母さんのことを大切にして、家族仲良く暮らしてください。

3 相続人ではない長男の嫁に遺産の一部を遺贈する場合

私の身体が不自由になってからも長男の嫁の花子さんは懸命に私の介護をしてくれました。私が施設に入らずにずっと自宅で生活ができたのも花子さんのおかげです。私は感謝の意を込め、花子さんに遺産の一部を渡すことにしました。
子どもたちも花子さんの頑張りは十分に承知してくれていると思います。私亡き後に相続のことで揉めることがないよう切に願っています。

4 長女が入所している障害者施設に寄付する場合

私の遺産は妻と長女に相続させるほか、長女が入所している社会福祉法人に遺産の一部を寄付します。障害を持つ長女のことが気掛かりですが、この寄付を有効に活用していただけたら幸いです。社会福祉法人のさらなるご発展を願っています。

5 家族に負担をかけたくないので、葬儀は家族葬にしてもらいたい場合

私は妻の幸子には本当に感謝しています。子どもたちもみんないい子に育ってくれてうれしく思っています。本当にありがとう。
私の葬儀に関しては、家族に負担をかけたくないと思っていますので、家族だけでささやかに済ませてください。
子どもたちは、お母さんのことを最期まで支えてあげてください。いつまでもみんなの幸せを願っています。

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いかがでしょうか。

それぞれの相続人に配慮をしながら付言事項を加えることによって、たとえ遺言の内容に納得がいかない相続人がいたとしても、あなたの想いが伝わり「こんな想いで遺言書を書いたのであれば、その想いを尊重しよう」と納得してもらえるかもしれません。

いざ、あなたの想いを言葉で表現するとなると、どんな書き方をしたらいいか迷うこともあるかもしれません。
数多くの遺言書の作成に携わってきた専門家が、あなたの希望が叶うような遺言書となるようお手伝いをさせていただきます。
ぜひお気軽にご相談ください。

「お宅の屋根、今すぐ修理しないと」にご用心!

こんにちは。スタッフの大谷です。

先日、わたしの父(77歳)が庭木の手入れしていたところ、見ず知らずの男性が近づいてきたそうです。
「お宅の屋根、ひどいことになっているよ。今すぐ修理しないと大変なことになるよ。疑うなら写真見せようか」
雨漏りもしていないのに、知らない人からいきなりそんなことを言われ、腹が立った父は「お付き合いのある工務店さんがいるからいい」と追い返したそうです。
母に話し、最後に塗装してから時間が経っているので、一応見てもらおうということになり、いつもリフォームなどを依頼している工務店に電話をしました。

結果。
経年劣化はしているものの、今すぐ大掛かりな工事が必要ではないと、気になるところだけ修理してくれました。
工務店さんによると、屋根やシロアリといった危機をあおり、工事を勧めるようなトラブルや詐欺がやはりあるそうです。中には、無料診断をしますと言って、屋根に上がり、割れてもいない瓦を割って、修理が必要だと迫るようなかなり悪質なケースもあるとのこと。
年寄りだと思って足元を見られたと、父はまた怒っていました。
今回は事なきを得ましたが、高齢者をターゲットにした詐欺を身近に感じた出来事でした。

「大変だ」「今すぐ工事しなければ」と言われれば、心配になるのは当然です。
しかし、そういうときこそ慌てずに対処しなければならないと思いました。
対処方法としてはまずは次の4つです。

①家族に相談
突然やって来た見知らぬ人を、すぐに家の中に入れたり屋根に上らせたりしてはいけません。
「キャンペーン中」「お得ですよ」に惑わされず、一人で判断しないで、いったんご家族に相談しましょう。

②別の専門家の意見を聞く
医療分野にセカンドオピニオンがあるように、違う専門家に意見を聞いてみましょう。また、普段から気軽に相談できる業者さんがいると、このような時に心強いと思いました。

③ご家族と日ごろからコミュニケーションを
特に、ご高齢の親御さんと離れて暮らしている方は、こんなこともあるから気を付けて、とお話をされることを強くおすすめします。

④クーリングオフの利用
もし契約を結んでしまったとしても、方法はあります。
契約を結んだ後に申し込みを撤回したい時は、クーリングオフという制度を利用することができます。
クーリングオフは、契約から8日以内に書面で行いましょう。
書面のコピーを保存し、配達証明や書留など、配達の記録が残る形で相手方に送ります。
書面は自分で書くこともできますが、不安な方は司法書士や弁護士などの専門家にご相談ください。
消費生活センターでも書き方を教えてくれます。静岡市にお住まいの方なら、静岡消費生活センター(電話 054-221-1056)へ相談してみましょう。

ただ、実際に被害に遭ってしまってからでは、元通りに回復することは難しくなってしまいます。

人を疑うなんて… と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、用心するに越したことはありません。
少しでも怪しいな、胡散臭いなと思ったら、ためらわずに断りましょう。

耳、目、口の不自由な方が遺言を作成する方法

こんにちは
スタッフの仲田です。

遺言書の作成を考える年齢になると、字が書けない方、言葉を発することが難しい方、また言葉が聞き取りにくい方、目が見えない方など身体上に不自由が生じている方も多く、自分は遺言書を書けないのではないかとお考えの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

先日も、脳梗塞を患い利き手が不自由となってしまった方から、「字を書くことができないのですが、遺言書を書くことはできますか?」という質問をいただきました。

遺言書の作成方法には自筆証書公正証書という2つの方法があります。

自筆証書遺言は、財産目録を除いて遺言者が自分で全文を書かなければなりませんので、書くことが難しい方は残念ながら自筆証書では遺言を作成することができません。
しかし、法律の専門家のもとで作成される公正証書遺言でしたら、身体上に不自由が生じ、ご自身の意思を伝えることが難しい方でも、代替の方法で遺言書を作成することができます。

では、公正証書遺言の作成手順に沿って、作成にあたって身体上の不自由が問題となる点はないのか確認しましょう。

【公正証書遺言の作成手順】
公正証書遺言は、公証人役場において、2人以上の証人立会いのもとに次のような順序で作成が進められます。(公証人役場に出向くことが難しい場合には、別に費用がかかりますが、ご自宅、介護施設や病院など遺言作成者がいる場所に公証人が出張することもできます)

① 遺言者が遺言の趣旨を公証人に「口頭で伝える」
② 公証人が、遺言者が「口頭で伝えた」遺言内容を筆記する
③ 公証人が遺言者と証人に遺言内容を「読み聞かせる」
④ 筆記の内容が正確であれば、遺言書に「署名捺印を行う」

「口頭で伝える」、「読み聞かせる」、「署名捺印を行う」ことが難しい人は、公正証書遺言を作成することはできないのではないのか、と不安に思われたかもしれません。

ご安心ください!
どのような方法で作成したのかを遺言書に付記することによって、公正証書遺言の作成が可能になるのです。

「話すことができない」場合
遺言内容を口頭で伝えることが難しい場合は、遺言の内容を通訳人の通訳により口述する方式、または公証人と筆談する方式いずれかを選択し、公証人がその旨を遺言書に記載します。

「耳が聞こえない」場合
公証人の読み聞かせが難しい場合は、通訳人の通訳によるという方式、または閲覧で済ませるという方式、いずれかを選択し、公証人がその旨を記載します。

「字を書くことができない」場合
署名、捺印を行うことが難しい場合は、前もって公証人に、ケガや病気により署名が難しい旨を伝えておけば、公証人がその事由を記載して遺言者に代わって代署、代印することにより可能となります。

「目が見えない」場合
目が見えない場合は、遺言内容を口頭で伝えることはできますし、また公証人の読み聞かせもできますので問題はありません。
字が書けない方と同様に、署名、捺印が難しくなりますが、公証人がその事由を記載して遺言者に代わって公証人が代署、代印することにより可能となります。

話すことができない人、耳が聞こえない人には通訳人が必要となる場合があります。通訳人は、手話通訳士の資格など特定の資格を有する人でなくても、遺言者の意思を公証人に伝えることができる人であれば構いません。
なお、通訳人は遺言者が選任することが原則ですが、公証人に依頼して公証人が選んだ通訳人のほうが、手続きが円滑に進む場合は公証人が選任することもあります。

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以上みてきましたように、身体上に不自由が生じている方も、個々の事情を考慮しながら、公証人と方法を検討し、公正証書遺言の作成が可能です。
ぜひ、公正証書遺言の作成を検討されてはいかがでしょうか。

当事務所はさまざまな事情を抱えている方の遺言書に関する相談を承っております。
お気軽にご相談ください。

相続人以外の人に財産を残すには?

スタッフの武笠です。

先日お客様から、「自分には身寄りがないので、亡くなった後の財産を友人に残したいのですができるのでしょうか」という声を聞く機会がありました。

家族関係が多様になっている現代において、内縁の妻や、義理の娘や息子など、相続人以外の人へ財産を残したいと考える人が増えてきています。
また、近年独身の高齢者が増えています。
特にお子さんがいない方の中には、自分が亡くなった後の財産を遠い親戚に残すより、お世話になった知人に残したいと考える方もいらっしゃるようです。

相続人以外の人に財産を渡すことはできるのでしょうか?

亡くなった人から財産を受け継ぐことができる人は民法で定められているため、何も対策せずに亡くなった場合は、相続人のみが財産を受け継ぐことができます。
しかし、遺贈をすることにより、相続人以外の人へも財産を残すことができるようになります。「遺贈」とは、遺言書により遺言者の財産を譲渡することをいいます。
つまり、遺言書を作成しておけば、相続人以外の人へも財産を残すことができるというわけです。

では、どのような場面で遺言書が活用できるのか、2つのケースを見ていきましょう。

◆ケース1 内縁の妻に財産を残したい
Aさんには長年連れ添ってきたBさんがいます。2人は婚姻届けを提出しておらず、AさんにとってBさんは内縁の妻になります。2人の間には子供はなく、Aさんの両親はすでに他界、弟のCさんがいます。
Aさんは自分が亡くなった後、財産を内縁の妻Bさんに残したいと考えていますが、Bさんは相続人ではないため、何も対策を取っていなければ、Aさんの弟Cさんが相続人として財産を取得することになります。
このケースでは、Aさんは遺言書を作成することで、Bさんのみに財産を残すことができます。

◆ケース2 お世話になった知人に財産を残したい
Aさんは未婚で子どももいません。両親と兄弟はすでに他界しており、相続人は弟Bさんの子、つまり甥のCさんとDさんのみです。しかし、AさんとBさんの仲は良好ではなく、さらに遠方に住んでいたこともあり、AさんはCさんともDさんともほとんど面識がありません。
Aさんは自分が亡くなった後、自分の財産がほとんど縁のないCさんとDさんに渡るより、長年お世話になった知人Eさんに残したいと考えています。Eさんは相続人ではないため、Aさんが何も対策をしていなければ、相続人であるCさんとDさんに財産が渡ります。
このケースでは、Aさんが遺言書を作成することで、Eさんのみに財産を残すことができます。

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以上のようなケースでは遺言書を作成することがとても有効です。
ただし、遺言書には、書き方や様式に決まりがありますので、注意が必要です。
もしも相続人以外に財産を残したいけどどうしよう……とお考えの方がいらっしゃったら、遺言書を作成することを検討してみるのもいいかもしれません。

当事務所では遺言書作成のサポートを行っています。
このようなお悩みがありましたら、ぜひお気軽にご相談ください。

ペットのために遺言を書こう

スタッフの市川です。

新型コロナの影響で、癒しを求めてペットを飼い始める人が増えたというニュースが一時期多く報道されていたのは、まだ記憶に新しいかと思います。
実際にコロナ禍の需要増加も相まって、現在の日本でペットを飼っている人の割合は3割近くにまでなっているようです。

今や家族同然に扱われるペットたちは、食事の質や医療の向上により平均寿命も延びてきています。飼い犬や飼い猫では20年近く生きることも少なくありません。
そのような状況の中で、「ペットより自分が先に亡くなってしまったら…」という不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。

実は、そんな不安を遺言で解消することが可能なのです。

ペットのために遺言を作るといっても、ペットに直接財産を渡すことは、法律上行うことができません。これは、財産を遺せるのは人、または法人に対してのみという決まりがあるためです。
そのため、ペットに直接財産を渡すのではなく、ペットの世話をしてくれる人に財産を渡し、その代わりにペットの面倒を見てもらうという方法を取ります。

遺言作成までの流れとしては
①ペットの面倒を見てもらう人を決める
②相手の承諾を得る
③遺言を作成する
といった流れで行うのがおすすめです。

ペットのことを考えると、一番重要なのは①ですね。
財産だけ受け取ってペットの世話をしないような相手を選んでしまったら…なんて考えただけでも恐ろしいですね。
大切なペットのためにも安心して世話をお願いできる人を探すようにしましょう。

②は必須ではありませんが、せっかく遺言書を作成したのに、いざというときに 世話を嫌がられて遺贈を放棄されてしまっては意味がありません。
ペットのことを想うのであれば、世話をお願いする相手には事前に話をして、承諾を得ておくようにしましょう。

そして、③の遺言書の作成ですが、文例としてはこのようなものがあります。

「第1条 遺言者は、次の財産を〇〇〇〇に遺贈する。
①愛犬〇〇
②〇〇銀行〇〇支店に有する 普通預金 口座番号〇〇〇〇のうち金〇〇〇万円

第2条 〇〇〇〇は、上記遺贈を受ける負担として、生涯にわたり、遺言者の愛犬〇〇を介護扶養し、死亡の場合は、相当な方法で埋葬、供養しなければならない。」

このような、負担(今回ではペットの世話)の代わりに財産を渡すことを負担付遺贈といいます。
この負担付遺贈について民法第1002条第1項では、「負担付遺贈を受けた者は、遺贈の目的の価額を超えない限度においてのみ、負担した義務を履行する責任を負う」とされています。
つまり、ペットの世話にかかる費用が受け取った財産額を超えない限りは、遺贈を受けた人には、ペットの世話をしなければならない義務があるということです。
しかし、逆にいえば、ペットの世話にかかる費用が受け取った財産額を超える場合は、それ以上ペットのために費用を負担をする義務はなくなるということでもあります。
費用が不足することがないように遺贈する金額を決めておくことが大事です。

注意が必要な点に気をつけて遺言を作成しておけば、自分にもしものことが起きたときにも、ペットの生活はしっかりと守られるので安心ですね。

今回ご紹介した「ペットのための遺言」のほかにも、「負担付贈与契約」や「信託」という方法でペットのために備えるということも可能です。
大切な家族の一員のためにも、自分に合った方法でしっかりと備えておきましょう。

どの方法を選ぶのがベストなのか、私どもも一緒になって考えます。
お困りの際はぜひご相談ください。