あなたの想いが伝わる 遺言書の付言事項とは

こんにちは。スタッフの仲田です。

遺言書は、相続のトラブルを防止するためには有効な手段のひとつです。
しかし、相続人の1人に多くの財産を渡すというような内容の遺言書では、かえってその遺言書がもとで家族が揉めてしまい、関係が悪化してしまうようなケースもたくさんあります。

遺言書は「家族に宛てた最後の手紙」といわれますが、実際は、財産の分配方法だけが書かれた遺言書も多く、家族は「手紙を受け取った」と感じることは少ないかもしれません。

先日、相続登記をするためにお預かりした遺言書の最後に、“みんなのおかげで幸せな人生を送ることができました。本当にありがとう という言葉が最後に添えられていました。
私もこんな素敵な言葉が添えられた遺言書を見たのは初めてで、心がじんわりしました。

この方の遺言書のように、家族への感謝の言葉や、遺言書を書いた理由などを添えることによって “あなたの想い” が伝わる、遺言書の「付言事項」についてご紹介します。

【遺言書に記載する事項】

遺言書には、記載することで法的効力が認められる「法定遺言事項」と、記載しても法的効力が認めらない「付言事項」があります。

「法定遺言事項」は、相続分の指定、遺産分割方法の指定など財産の処分・分配に関する事項、子の認知、相続人の廃除など相続人の身分に関する事項で、その書き方は民法によって定められています。

一方、「付言事項」は書き方は自由で、なんでも書くことができます。

しかし、受け取った家族の気持ちを考えずに書いてしまうと、家族の関係を悪化させてしまうこともありますので注意が必要です。

【付言事項として加えることをおすすめする内容】

・家族への感謝の気持ち
・なぜ遺言を作成しようと思ったのかという理由
・どうしてこの配分にしたのかという意図や理由
・葬儀の方法  など

【付言事項の注意点】
・否定的な言葉はあまり書かないようにしましょう。
・あまり多くのことを書くことは避けましょう。
もし、たくさん書きたい場合には手紙を添えたり、別途エンディングノートを利用したりしましょう。
・葬儀の方法などは、葬儀後に遺言書を開くこととなる場合もあります。あらかじめ希望する葬儀の方法については家族に伝えておきましょう。

では、次に具体的な事例を紹介します。

【付言事項の具体例】

1 事業の後継者として長男に財産を多く相続させる場合

長男の太郎は大学卒業後、私とともに家業に従事し、その発展に大きく貢献してくれました。そのおかげで、私も安心して老後を暮らすことができました。そこで、私は太郎に他の兄弟よりも多い遺産を渡すことにしました。
他の兄弟も、太郎が家業に貢献してくれていることは知っていると思いますので、このような遺言を残すことを理解してくれるとうれしいです。私亡き後も家族みんなが仲良く暮らしていくことを心から願っています。

2 遺留分を請求しないでほしい場合

私が亡くなった後も妻には安心して暮らしていってほしいので、妻に自宅不動産と預金の半分を相続してもらうこととしました。
どうか子どもたちは遺留分は請求しないでください。私亡き後もお母さんのことを大切にして、家族仲良く暮らしてください。

3 相続人ではない長男の嫁に遺産の一部を遺贈する場合

私の身体が不自由になってからも長男の嫁の花子さんは懸命に私の介護をしてくれました。私が施設に入らずにずっと自宅で生活ができたのも花子さんのおかげです。私は感謝の意を込め、花子さんに遺産の一部を渡すことにしました。
子どもたちも花子さんの頑張りは十分に承知してくれていると思います。私亡き後に相続のことで揉めることがないよう切に願っています。

4 長女が入所している障害者施設に寄付する場合

私の遺産は妻と長女に相続させるほか、長女が入所している社会福祉法人に遺産の一部を寄付します。障害を持つ長女のことが気掛かりですが、この寄付を有効に活用していただけたら幸いです。社会福祉法人のさらなるご発展を願っています。

5 家族に負担をかけたくないので、葬儀は家族葬にしてもらいたい場合

私は妻の幸子には本当に感謝しています。子どもたちもみんないい子に育ってくれてうれしく思っています。本当にありがとう。
私の葬儀に関しては、家族に負担をかけたくないと思っていますので、家族だけでささやかに済ませてください。
子どもたちは、お母さんのことを最期まで支えてあげてください。いつまでもみんなの幸せを願っています。

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いかがでしょうか。

それぞれの相続人に配慮をしながら付言事項を加えることによって、たとえ遺言の内容に納得がいかない相続人がいたとしても、あなたの想いが伝わり「こんな想いで遺言書を書いたのであれば、その想いを尊重しよう」と納得してもらえるかもしれません。

いざ、あなたの想いを言葉で表現するとなると、どんな書き方をしたらいいか迷うこともあるかもしれません。
数多くの遺言書の作成に携わってきた専門家が、あなたの希望が叶うような遺言書となるようお手伝いをさせていただきます。
ぜひお気軽にご相談ください。