耳、目、口の不自由な方が遺言を作成する方法

こんにちは
スタッフの仲田です。

遺言書の作成を考える年齢になると、字が書けない方、言葉を発することが難しい方、また言葉が聞き取りにくい方、目が見えない方など身体上に不自由が生じている方も多く、自分は遺言書を書けないのではないかとお考えの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

先日も、脳梗塞を患い利き手が不自由となってしまった方から、「字を書くことができないのですが、遺言書を書くことはできますか?」という質問をいただきました。

遺言書の作成方法には自筆証書公正証書という2つの方法があります。

自筆証書遺言は、財産目録を除いて遺言者が自分で全文を書かなければなりませんので、書くことが難しい方は残念ながら自筆証書では遺言を作成することができません。
しかし、法律の専門家のもとで作成される公正証書遺言でしたら、身体上に不自由が生じ、ご自身の意思を伝えることが難しい方でも、代替の方法で遺言書を作成することができます。

では、公正証書遺言の作成手順に沿って、作成にあたって身体上の不自由が問題となる点はないのか確認しましょう。

【公正証書遺言の作成手順】
公正証書遺言は、公証人役場において、2人以上の証人立会いのもとに次のような順序で作成が進められます。(公証人役場に出向くことが難しい場合には、別に費用がかかりますが、ご自宅、介護施設や病院など遺言作成者がいる場所に公証人が出張することもできます)

① 遺言者が遺言の趣旨を公証人に「口頭で伝える」
② 公証人が、遺言者が「口頭で伝えた」遺言内容を筆記する
③ 公証人が遺言者と証人に遺言内容を「読み聞かせる」
④ 筆記の内容が正確であれば、遺言書に「署名捺印を行う」

「口頭で伝える」、「読み聞かせる」、「署名捺印を行う」ことが難しい人は、公正証書遺言を作成することはできないのではないのか、と不安に思われたかもしれません。

ご安心ください!
どのような方法で作成したのかを遺言書に付記することによって、公正証書遺言の作成が可能になるのです。

「話すことができない」場合
遺言内容を口頭で伝えることが難しい場合は、遺言の内容を通訳人の通訳により口述する方式、または公証人と筆談する方式いずれかを選択し、公証人がその旨を遺言書に記載します。

「耳が聞こえない」場合
公証人の読み聞かせが難しい場合は、通訳人の通訳によるという方式、または閲覧で済ませるという方式、いずれかを選択し、公証人がその旨を記載します。

「字を書くことができない」場合
署名、捺印を行うことが難しい場合は、前もって公証人に、ケガや病気により署名が難しい旨を伝えておけば、公証人がその事由を記載して遺言者に代わって代署、代印することにより可能となります。

「目が見えない」場合
目が見えない場合は、遺言内容を口頭で伝えることはできますし、また公証人の読み聞かせもできますので問題はありません。
字が書けない方と同様に、署名、捺印が難しくなりますが、公証人がその事由を記載して遺言者に代わって公証人が代署、代印することにより可能となります。

話すことができない人、耳が聞こえない人には通訳人が必要となる場合があります。通訳人は、手話通訳士の資格など特定の資格を有する人でなくても、遺言者の意思を公証人に伝えることができる人であれば構いません。
なお、通訳人は遺言者が選任することが原則ですが、公証人に依頼して公証人が選んだ通訳人のほうが、手続きが円滑に進む場合は公証人が選任することもあります。

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以上みてきましたように、身体上に不自由が生じている方も、個々の事情を考慮しながら、公証人と方法を検討し、公正証書遺言の作成が可能です。
ぜひ、公正証書遺言の作成を検討されてはいかがでしょうか。

当事務所はさまざまな事情を抱えている方の遺言書に関する相談を承っております。
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