遺言書

ペットのために遺言を書こう

スタッフの市川です。

新型コロナの影響で、癒しを求めてペットを飼い始める人が増えたというニュースが一時期多く報道されていたのは、まだ記憶に新しいかと思います。
実際にコロナ禍の需要増加も相まって、現在の日本でペットを飼っている人の割合は3割近くにまでなっているようです。

今や家族同然に扱われるペットたちは、食事の質や医療の向上により平均寿命も延びてきています。飼い犬や飼い猫では20年近く生きることも少なくありません。
そのような状況の中で、「ペットより自分が先に亡くなってしまったら…」という不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。

実は、そんな不安を遺言で解消することが可能なのです。

ペットのために遺言を作るといっても、ペットに直接財産を渡すことは、法律上行うことができません。これは、財産を遺せるのは人、または法人に対してのみという決まりがあるためです。
そのため、ペットに直接財産を渡すのではなく、ペットの世話をしてくれる人に財産を渡し、その代わりにペットの面倒を見てもらうという方法を取ります。

遺言作成までの流れとしては
①ペットの面倒を見てもらう人を決める
②相手の承諾を得る
③遺言を作成する
といった流れで行うのがおすすめです。

ペットのことを考えると、一番重要なのは①ですね。
財産だけ受け取ってペットの世話をしないような相手を選んでしまったら…なんて考えただけでも恐ろしいですね。
大切なペットのためにも安心して世話をお願いできる人を探すようにしましょう。

②は必須ではありませんが、せっかく遺言書を作成したのに、いざというときに 世話を嫌がられて遺贈を放棄されてしまっては意味がありません。
ペットのことを想うのであれば、世話をお願いする相手には事前に話をして、承諾を得ておくようにしましょう。

そして、③の遺言書の作成ですが、文例としてはこのようなものがあります。

「第1条 遺言者は、次の財産を〇〇〇〇に遺贈する。
①愛犬〇〇
②〇〇銀行〇〇支店に有する 普通預金 口座番号〇〇〇〇のうち金〇〇〇万円

第2条 〇〇〇〇は、上記遺贈を受ける負担として、生涯にわたり、遺言者の愛犬〇〇を介護扶養し、死亡の場合は、相当な方法で埋葬、供養しなければならない。」

このような、負担(今回ではペットの世話)の代わりに財産を渡すことを負担付遺贈といいます。
この負担付遺贈について民法第1002条第1項では、「負担付遺贈を受けた者は、遺贈の目的の価額を超えない限度においてのみ、負担した義務を履行する責任を負う」とされています。
つまり、ペットの世話にかかる費用が受け取った財産額を超えない限りは、遺贈を受けた人には、ペットの世話をしなければならない義務があるということです。
しかし、逆にいえば、ペットの世話にかかる費用が受け取った財産額を超える場合は、それ以上ペットのために費用を負担をする義務はなくなるということでもあります。
費用が不足することがないように遺贈する金額を決めておくことが大事です。

注意が必要な点に気をつけて遺言を作成しておけば、自分にもしものことが起きたときにも、ペットの生活はしっかりと守られるので安心ですね。

今回ご紹介した「ペットのための遺言」のほかにも、「負担付贈与契約」や「信託」という方法でペットのために備えるということも可能です。
大切な家族の一員のためにも、自分に合った方法でしっかりと備えておきましょう。

どの方法を選ぶのがベストなのか、私どもも一緒になって考えます。
お困りの際はぜひご相談ください。

元気なうちに遺言を準備しよう!

司法書士の松永です。

「終活」という言葉が一般的になり、ご自身で準備をされる方も多くなったように思います。

しかし、まだまだ「うちはそんなに財産がないから大丈夫」「子どもたちの仲が良いから揉める心配はない」などのお気持ちのまま他界され、その相続人が相続手続きで険悪になってしまわれたり、大変な思いをされているケースがたくさんあります。

意外に思われるかもしれませんが、全国の家庭裁判所に持ち込まれた遺産分割の揉めごとのうち3分の1は、遺産が1000万円以下の案件です。全体の4分の3は5000万円以下です。
たとえ遺産が少ないとしても、それを分ける(遺産分割)となると揉めてしまうことが多いことがわかります。
また、日ごろ仲の良い兄弟姉妹でも、いざ相続となるとそれぞれの配偶者の思惑も絡み、話し合いがスムーズにいくとは限りません。
生前に遺産の分け方を話し合っていても、口約束だけだったがために争うことになってしまったという事例も多くあります。

◆遺言の種類
仲が良かった家族が争うようなことにならないように、また自分の財産を誰にどのように渡したいかご自身の意思を記し残しておくこと、家族への最後の伝言、それが「遺言」です。

遺言は方式が法律で定められています。
大きく分けて、自筆証書遺言公正証書遺言の2種類があります。
自筆証書遺言については、2020年7月から法務局で遺言を保管する制度が始まり、遺言作成者がどこで遺言書を保管するかを選択できるようになりました

  自筆証書遺言 公正証書遺言
  保管制度利用しない 保管制度利用
作成方法 本人が遺言の本文、日付、氏名等を自筆で書き、捺印する。
財産目録は、印字・代筆・不動産登記事項証明書の添付等も可。(各ページに署名・捺印が必要)。印鑑は認印や拇印も可。
本人が口述し、公証人が筆記する。
実印、印鑑証明書、本人確認書類、相続人の戸籍謄本等が必要。
場所 問わない 公証役場(公証人が出向くことも可)
証人 不要 2人以上(公証役場で手配を頼むことも可)
署名捺印 本人 本人、公証人、証人
家庭裁判所検認 必要 不要 不要
メリット ・好きなときに1人で書ける
・費用がかからない
・秘密が守られる

・好きなときに1人で書ける
・費用は数千円
・失くしたり書き換えられたりする心配がない
・検認手続き不要

・無効や争いになりにくい
・失くしたり書き換えられたりする心配がない
・検認手続き不要
デメリット

・無効や争いになることがある
・失くしたり書き換えられたりする恐れがある
・検認手続きが必要

・無効や争いになることがある

・必要な書類が多い
・作成に数万円以上の費用がかかる
・証人2人必要

◆自筆証書と公正証書 メリットとデメリット
自筆証書のメリットは、なんと言っても費用がかからず手軽にできることです。
ただその反面、書き方や内容に不備や不明瞭な部分があると、せっかく書いた遺言が役立たないこともあります。
また、自分で書かなくてはなりませんので、長い遺言を書く場合は大変です(なお、財産目録は自分で書かなくてもよくなりました)。
さらに、相続時には、家庭裁判所の検認という、遺言を確認する手続きが必要なので、遺言のとおりに財産を取得できるまでに時間がかかります。

なお、法務局での遺言書の保管制度を利用することで、①遺言の形式的な不備がなくなる、②検認手続きが不要になる、③紛失や改ざんのおそれがなくなる、などのメリットがあります。

一方の公正証書遺言は、公証役場に出向く手間や、最低でも数万円の費用がかかります。
しかし、法律の専門家である公証人が関与し、かつ証人2名が立ち会うため、安全で確実に財産を渡すことができる方法といえます。

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「争続」を避けるため、また自分の気持ちを記すという意味でも遺言を創ってみましょう。
当事務所では、遺言の書き方のアドバイス、また保管制度利用の法務局への付き添いなど、様々なサポートも行っております。
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