こんにちは
司法書士の武笠です。
コロナ禍での生活が日常となって以降、遠方に住んでいる家族に気軽に会うことも難しくなってしまいました。
中には久しぶりに実家に帰り、自分の親に会ったら「あれ? 物忘れが前よりも酷くなっている?」なんて感じた方もいるようです。
実際に自粛生活が続き、外出できず、周りとのコミュニケーションも減ったことで、認知症の発症や進行を招いてしまう危険もあるといわれています。
認知症の症状が出てきて、初めて家族で相続ついて考え始めたという方もいるかもしれません。
今日は認知症になった人が有効な遺言を作ることができるのかということについてお話ししていきます。
結論からいうと、有効な遺言を作成できるかどうかは、その人の認知症の症状、程度によります。
なんともあいまいな答えになってしまいましたが、認知症になったからといって、ただちに遺言の作成ができなくなるわけではありません。
遺言が有効だと認められるためには、遺言の内容を理解し、遺言に基づく効果を認識できる能力が必要です。これを遺言能力といいます。
もしも遺言能力がなければ、せっかく作った遺言は無効だと判断され、意味のないものになってしまいます。
認知症の人に遺言能力があるかどうかは、遺言作成時の精神障害の程度や、遺言の内容が複雑か簡単か、遺言を作成するに至った動機が自然なものであるかなど、さまざまな要素を総合して判断されます。
これらを考慮して遺言能力があると認められれば、認知症の方でも有効な遺言を作成することができる場合があります。
なお、成年被後見人になっている場合はより厳しくなります。
遺言を作成するための能力が一時回復した状態であり、医師2名以上の立会のもと、作成時に遺言を作成する能力を有していた旨を遺言に付記してこれに署名捺印することが必要です。
また、将来の争いを防ぐために以下のような点を注意しておくことも大切です。
①自筆証書遺言ではなく公正証書遺言で作成する
②医師の立会を求め、診断書などの医学的証拠を残しておく
③録音、録画などで遺言作成時の状況を再現できるようにしておく
④遺言作成に至った動機、経緯を付言に残しておく
⑤認知症の程度に合った遺言内容にする、複雑にしすぎない
ここまで、認知症の人でも有効な遺言を作成できる場合があるという話をしましたが、たとえ遺言を作成できたとしても認知症を理由に無効を求め、相続人間で争いになるケースもあります。
そうならないために、元気なうちに遺言を作成することが大切です。
相続対策を行うのに早すぎるということはありません。
コロナ禍でなかなか家族で頻繁に集まることが難しい今だからこそ、状況が落ち着いて顔を合わせることができたら将来について話してみるものいいかもしれません。
当事務所でも遺言作成のサポートを行っておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。
司法書士の武笠です。
先日お客様から、「自分には身寄りがないので、亡くなった後の財産を友人に残したいのですができるのでしょうか」という声を聞く機会がありました。
家族関係が多様になっている現代において、内縁の妻や、義理の娘や息子など、相続人以外の人へ財産を残したいと考える人が増えてきています。
また、近年独身の高齢者が増えています。
特にお子さんがいない方の中には、自分が亡くなった後の財産を遠い親戚に残すより、お世話になった知人に残したいと考える方もいらっしゃるようです。
相続人以外の人に財産を渡すことはできるのでしょうか?
亡くなった人から財産を受け継ぐことができる人は民法で定められているため、何も対策せずに亡くなった場合は、相続人のみが財産を受け継ぐことができます。
しかし、遺贈をすることにより、相続人以外の人へも財産を残すことができるようになります。「遺贈」とは、遺言書により遺言者の財産を譲渡することをいいます。
つまり、遺言書を作成しておけば、相続人以外の人へも財産を残すことができるというわけです。
では、どのような場面で遺言書が活用できるのか、2つのケースを見ていきましょう。
◆ケース1 内縁の妻に財産を残したい
Aさんには長年連れ添ってきたBさんがいます。2人は婚姻届けを提出しておらず、AさんにとってBさんは内縁の妻になります。2人の間には子供はなく、Aさんの両親はすでに他界、弟のCさんがいます。
Aさんは自分が亡くなった後、財産を内縁の妻Bさんに残したいと考えていますが、Bさんは相続人ではないため、何も対策を取っていなければ、Aさんの弟Cさんが相続人として財産を取得することになります。
このケースでは、Aさんは遺言書を作成することで、Bさんのみに財産を残すことができます。
◆ケース2 お世話になった知人に財産を残したい
Aさんは未婚で子どももいません。両親と兄弟はすでに他界しており、相続人は弟Bさんの子、つまり甥のCさんとDさんのみです。しかし、AさんとBさんの仲は良好ではなく、さらに遠方に住んでいたこともあり、AさんはCさんともDさんともほとんど面識がありません。
Aさんは自分が亡くなった後、自分の財産がほとんど縁のないCさんとDさんに渡るより、長年お世話になった知人Eさんに残したいと考えています。Eさんは相続人ではないため、Aさんが何も対策をしていなければ、相続人であるCさんとDさんに財産が渡ります。
このケースでは、Aさんが遺言書を作成することで、Eさんのみに財産を残すことができます。
*****
以上のようなケースでは遺言書を作成することがとても有効です。
ただし、遺言書には、書き方や様式に決まりがありますので、注意が必要です。
もしも相続人以外に財産を残したいけどどうしよう……とお考えの方がいらっしゃったら、遺言書を作成することを検討してみるのもいいかもしれません。
当事務所では遺言書作成のサポートを行っています。
このようなお悩みがありましたら、ぜひお気軽にご相談ください。